『Dexterous tongue』 M-Ver.


照明を落とした室内に、荒い息遣いが響いている。
ダイニングの3人掛けソファに、全裸の男が座っていた。
男……と形容するにはまだ若すぎるのだが、顔立ちや身体のつくりはすでに成人男性を思わせた。
男は大きく足を開いて、視線を下へ向けている。その視線の先には、もうひとり、男がうずくまっていた。
こちらは本当に男というより、少年だった。金色の髪に縁取られた顔も、きゃしゃな骨格も。しかしソファによりかかり眉根を寄せ、あえぐように息を吐いている男とは対照的に、彼は着衣のままで、無表情だった。
男……ムサシはわきあがる快感を逃すように、ため息をつく。ムサシの足の間にうずくまったヒル魔は、それを聞きつけてかすかに口の端を上げた。
ヒル魔の指はさっきから、ムサシの中心でそそり立ったものにからみつけられている。
器用な……器用すぎる指先の緩急をつけた動きに、ムサシは翻弄されていた。
ヒル魔は先端に浮いている球をすくうと、それがあわ立つほどの速度で指先を細かく震わせるようにして尿道へこすりつける。
一点へ集中してのあまりに早い動きに、ムサシは思わず息を詰める。ガクッ、ガクッと腰が勝手に動いた。
そうしておいて、今度は緩慢な動きで、指先を雁首の一番盛り上がっているところへあてて、形を確かめるようにゆっくりと一周させる。それから、人差し指と親指で輪を作り、それをくびれたところへあてがうと、手首をひねってすばやく左右にこすった。
びくん、とムサシのひざが跳ね上がる。
ヒル魔は人差し指をからみつけたまま、親指の腹をピタリと裏筋にあてがい、根元のほうへすーっ、とはき下ろす。それにつれて、ピン、と皮が張り詰めたところで、左手で皮の薄くなった亀頭全体をなぜまわした。
頭がクラクラするほどの刺激に、ムサシは短くうめき声をあげる。
「……気持ちよさそうだなぁ、オイ」
その声に視線をあげた。
ヒル魔がにやにやと微笑いながらこちらを見ていた。その間もゆっくりと手首をグラインドさせて上下にさすっている。
ムサシもわずかに口角をあげ、「ああ、すげぇ……いい」と絞るように答える。
それが意外と余裕のある態度に見えたのか、ヒル魔はつまらなそうに笑みを消した。
たしかにすぐイってしまいそうなほどせっぱつまってはいなかったが、実のところ余裕などなかった。
こうしている今も、ヒル魔の指に意識をもっていかれる。
「お前……上手すぎるぞ」
ムサシは低くつぶやく。
ヒル魔はまたにやりと笑みを浮かべた。
「手コキでいっぺんイッちまうか?」
先端をつまみあげるような動作をしながら、左手ではふたつの果実をやわやわともんでいる。
「……」
ムサシは己の息子を見てしばし考え込む。
このままイかせてほしいと言えば、ヒル魔はイかせてくれるだろうが。
「なあ……ヒル魔」
ん? というように、ヒル魔は視線を向けてくる。
「……その……口で……してくれないか」
言ったとたん、口の中が干上がった。
怒るだろうか。
ヒル魔は一瞬で表情を消す。と、ムサシのものを握りこんで、すばやく上下にスクロールさせた。
「うっ、あっ……!」
容赦のない動きに、ムサシは背すじを伸ばして声をあげる。先端から先走りがボタボタと垂れた。
ダメだ。イっちまう……!
やっぱり口ではしてくれないか。
わずかな失望と、やはりな、という思い。
すると、ピタとヒル魔の手が止まった。
見れば、意地の悪い笑みを浮かべている。
「……ばぁか。冗談だ」
ムサシは荒く息をついて、ヒル魔を見つめるだけだ。
ヒル魔はムサシと視線を合わせたまま、あーん、と大きく口をあけ、舌を突き出した。
ムサシのものに暖かい息がかかる。
これからおこることを期待して、ピクッピクッとムサシ自身が跳ねた。
舌先が触れた……と思う間もなく、ムサシ全体がすっぽりと口内に呑み込まれた。
「う……ああっ」
予想以上の快感に声が漏れるのをとめられない。鳥肌がたつ。
暖かくて、湿っていて……。
自分のものがさらに硬くなっていくのが分かった。ぶるっ、と身体が震える。咄嗟に達してしまいそうで、思わず、ぎゅっ、とこぶしを握った。
ヒル魔は頬をすぼめるようにして、ゆっくりと引き抜いていく。
「うぅ……っ」
くびれたところまでくると唇で締め付けるようにしながらこきざみに前後にゆする。そうしながら舌先を先端へくるくるとこすりつけた。
「あっ、あっ」
ひとたまりもなかった。敏感な箇所を集中して責められては。きつく目をつぶり、ガクガクと腰をゆする。
「ダメ、だ、もう……イっちまう……!」
ヒル魔は舌を裏筋にあてがったまま、頭を下げてふたたび全部をふくむ。根元に強く吸いつき、再び先端へ。そして亀頭をれろれろ、と舐めまわす。
「はあっ、ああっ」
そんなことを2、3度繰り返されるとムサシの腰が小さく震えだした。
下腹と太ももの筋肉が張り詰める。限界が近い。
ヒル魔の動きが徐々に速くなる。
「も、う……ダメ……だ! ホントに……イク……っ」
ムサシは大きくのけぞって奥歯をかみ締める。
ヒル魔に飲んでもらうつもりはなかったから、必死で警告した。
付け根の奥のほうに、きゅう、と絞られるような感覚。
さらにヒル魔は先端を含んだまま、竿の部分を握りこんだ掌で上下にこすった。完全に、イかせるための動きだ。
「出る…・・・イク……っ」
限界だ。
そう思ったとき、ヒル魔の口が離れた。
ほっとして吹き出すに任せようとした丁度そのとき、先端に硬いものが触れた。
ヒル魔の歯がぶつかったのだ。
「あっ」
それは本当にわずかなものだったが、敏感なところへ痛みすれすれの強い刺激に、ムサシは腰だけでなく、身体全体をビクリと跳ね上げた。瞬間、頭が真っ白になる。と同時に、ドっと吹きあげた。
ヒル魔はなおも指先でしぼりあげるように手を動かしている。そのせいでいつもよりずっと勢いよく、しかも長く射精が続く。
しかしそれを冷静に感じていたわけではない。ムサシはほとばしる快感をむさぼるのに夢中だった。
「うああ…・・・っ、あああ……っ」
ムサシは声を上げながら幾度となく腰をつきあげ、吐精し続ける。
いい……っ!
頭の中だけで呟いているのか、口に出てしまっているのかもはや分からない。
やっと収まってくると、ヒル魔は尿道に口をつけて、ちゅうぅ……、と残ったものを吸い上げた。
「ううっ」
射精による快感をなおも長引かされて、ムサシはビクビクと身体を震わせる。
そうして余韻にひたりながら、ゆっくりと身体から力を抜いた。
すごかった……。こんな快感はむろん、初めてだ。
ムサシのふいごのような息遣いがおさまってきた頃、ヒル魔がぽつりと「よかったか?」と訊いてきた。
見れば、ヒル魔はまだムサシの足元にうずくまって、じっとムサシを見ている。
よかったに決まっていた。ヒル魔もそれは分かっているだろうが。
ムサシは黙ったまま腕を伸ばしてヒル魔は抱き寄せると、深くて長いキスをした。
ヒル魔の前をまさぐると、触れられないまま硬くなっているのが分かる。ヒル魔も興奮していたのだ。
さて、今度はムサシがする番だった。
ヒル魔のように上手くはできないだろうが。
そう思いながら、ムサシはヒル魔と身体を入れ替えた。


ヒル魔編も追加予定。この内容だと「指」でも「初〜」のお題でもよかったかも;

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