『3』
翌日。武蔵は機械の操作をすべて助手任せにした。
あの後、やはり、ヒル魔の肢体を思い出さずに欲望を処理する事ができなかったのだ。
会わなければ、見なければ、あれに欲情することもないはずだ。
だから距離を置こうとした。
だのに、一日たった今も、白い身体がちらついて、どうかすると下半身が熱を帯びそうになる。
一体、どうしたんだ、俺は……。
深いため息をついたとき、目の前の電話が鳴った。
「どうした」
ボタンを押して問うと、助手の声が流れてきた。
『C111が非常な興奮状態にあります。鎮静剤を投与しても宜しいでしょうか?』
一瞬、C111が何だったか、とまどう。ああ、ヒル魔のことだ。
「ちょっと待て。興奮状態なのは当然だろう?」
ヒル魔には今までも色々薬品を使っている。鎮静剤といえど、下手に投与できない。
『いえ……』
応える助手の声が、なぜか苦々しげだ。
『性的な興奮ではありません』
要領を得ない会話に焦れて、すぐ行く、と応えて武蔵は電話を切った。
ドアを開けると、ガラスの向こうに、一昨日同様、吊り下げられた格好のヒル魔がいた。なにやら叫んでいる。
姿を現した武蔵に、助手が黙ってヘッドホンを差し出した。
耳に差し込むと、案の定高い怒鳴り声が聞こえてきた。
『タマぁ、破裂させる気か、この野郎! 今すぐコレ外しやがれ! この変態ども!』
武蔵はヘッドホンを外し、助手に視線を向ける。
「……で。破裂しそうなのか?」
助手はかすかに首を横に振る。
「いえ、まだもう少し大丈夫なはずです」
それにしても、一日射精させずに快楽だけを与え続けたのだ。痛みは相当なものだろう。
武蔵は再びヘッドホンをかぶり、マイクをオンにする。
その途端、ヒル魔が顔を上げた。
『変態糞軍医! こりゃ、テメーの指示か、この糞ヤブ!』
相変わらず得体の知れないカンをしている。
「……我慢できないか?」
『ケッ! 丸1日マスかいてたテメーに言われたくねぇな!』
助手が、わずかにぎょっとした顔を武蔵に向ける。武蔵が1日、ここへ姿を見せなかったのは事実だ。だが、ヒル魔がそれを知るはずはない。
はったりに振り回されてたまるものか。
武蔵は息を吸い込み、深いため息をつく。
「俺は忙しい。一日中ヨガってりゃいいお前と違ってな」
『これがヨガってるように見えんのかよ、テメーのふしあなには!』
ぎり、とヒル魔が歯をくいしばるのが見えた。
『うっ、あ……っ』
きつく眉をしかめ、大きく身体をのけぞらせる。ぶるぶると太ももが震えた。
「おい、まだ続けてるのか?」
いささかあわてて武蔵は助手を振り返る。
助手は不思議そうに、はい、と答えた。
『あっ、……はぁ……糞、ったれ……っ』
ヒル魔はなおも身体をよじり、腰をつきあげ、舌を突き出す。
『う……ぅう……糞……っ』
苦しげな喘ぎの下から、悪態をつく。
くねる白い身体が、ローションか汗で、濡れて光っていた。
妙に嗜虐心をそそる姿だ。
激しく身体をよじるヒル魔に視線が吸い寄せられているのに気づいて、武蔵は舌打ちをかろうじて押し殺した。
「……止めてやれ」
助手はいぶかしげな視線を向けてきたが、言われたとおり機械を操作する。
ヒル魔が大きな呼吸を繰り返しながら弛緩した。
これ以上続けると、武蔵のほうが限界を超えてヒル魔をいたぶってしまいそうだった。科学者として冷静な判断が下せるか、自信がない。
めちゃめちゃに踏みしだいて痛めつけたい。そう男を駆り立てる何かを、ヒル魔は持っているようだ。
「奥の部屋に運んでおけ」
ヒル魔の吊り下げられた部屋の奥には、簡便な治療室が設けられている。
「腕と足を痛めているようだ」
あまりに激しく暴れるのと、水分のせいで、拘束された部分が傷ついているようだ。
治療してやらねば。
肝心の部分に集中させるためにも。
「了解しました」
助手がアームを操作する。
ヒル魔が何やらわめいたが、機械にかなうはずもなく、奥の部屋へ運ばれていった。
助手が立ち上がろうとするのを、武蔵は手で制する。
「いい、俺がやる」
「え……」
「一日こいつのお守りで疲れただろう。休んでこい。といっても俺も用があるからな。3時間ほどしたら呼ぶ」
助手はかすかに会釈して、部屋を出て行った。
その足音が聞こえなくなるまで待って、武蔵も部屋を後にする。
向かう先は、ヒル魔のいる治療室。
部屋に入ると、ヒル魔は拘束されたままベッドの上に座らされていた。
ドアが開閉する音は聞こえただろうに、反応はない。
ガラス越しではなく、初めて間近に見るヒル魔。思ったよりしっかりと筋肉がついている。しかし、きめの細かい肌は、いかにもさわり心地がよさそうだ。
ガラスを取り払った分だけ、より生身の肉体を感じさせる。
ヒル魔の脚の間には、刺激をうけすぎて赤黒く充血したものがある。白く、鈍い光を放つ身体のなかで別の生き物のようだ。その下には、はちきれんばかりのふたつの果実。いずれもローションと汗と、そしてヒル魔の体液に濡れている、そして更に、下に……。
まるで視姦するようにヒル魔を見ていることに気づいて、武蔵は気まずく視線を外した。
「……つらいだろう?」
武蔵が声をかけると、ヒル魔はのろのろと振り返る。
「……何がだ?」
「頑固だな」
ほとんど独り言。ヒル魔はニヤニヤと笑っただけだった。
脂汗を流しているほどつらいくせに。
「……オイ、変態軍医、コレ外せ」
かすかに頭を振って言う。
「息子についてるヤツか?」
「違う。アイマスクだ」
ここへ運んだ以上、確かにアイマスクは必要ない。手足も拘束されているし、大丈夫だろう。
そう判断し、武蔵は近寄ってアイマスクを外した。
「う……」
ヒル魔がうめいて、俯く。
ずっと目隠しされていたせいで、蛍光灯の灯りがまぶしかったのだろう。
「ち、きしょ……眼がいてぇ……」
ぶつぶつ言いながらヒル魔は顔を武蔵へ向けた。
武蔵は思わず身体をこわばらせる。
ヒル魔の顔は知っている。写真でもビデオでも見た。
だが、目の前のヒル魔は両方の眼からぼろぼろと涙を流している。それが、光のせいだとわかってはいるが、どんな拷問にも屈した様子がなかったのを知っているだけに、武蔵をうろたえさせた。
が、それを悟られぬよう、武蔵は近くの棚から目薬を取り出す。
武蔵が近寄ると、ヒル魔は顔を上げて武蔵を見る。
「目薬だ」
そう断って、武蔵はヒル魔の顔をあおのかせる。
目薬を落とすと、ヒル魔は数回まばたきをした。思いのほか長いまつげから、小さな水滴が散る。涙の後を追うように流れる目薬を、武蔵は指で掬った。
「……そろそろ、降伏したらどうだ。このまま持久戦に入ったところでお前に勝ち目はないぞ」
目薬を元の場所にもどしながら、武蔵は言う。
ヒル魔は答えない。
武蔵は代わって、消毒薬や傷薬を取り出す。
「こっちは人数もいるし、設備も十分だ。お前が頑張ったところで、いつかは……」
うめき声が聞こえた気がして言葉を切り、ヒル魔を見る。
「! ……おい?!」
見て、驚いた。薬を取り落とすところだった。
いつの間にかヒル魔の拘束具は手も脚も、そして肝心の場所からも外されていた。
そして、ヒル魔は自分自身を弄んでいた。
「お前、どうやって……!」
あわてて駆け寄り、腕をつかんで引き上げる。
ヒル魔はあっさりとそこから手を離した。
つん、と青臭い匂いが鼻をつく。
「……ってぇよ」
ヒル魔の呟き。拘束具を外した部分は、案の定赤くすりむけている。
つかんだ手首は思ったより細かった。
手首をきつく拘束している拘束具は、たとえ手錠抜けができても外せる代物ではないのだ。
「……どうやったんだ」
そういいながらも、武蔵は薬を手早くヒル魔の傷に塗りこんでいく。
これでは拘束具の意味がない。いやそれより、外せるのなら、何故ヒル魔はおとなしく拘束されていたのか。
「ひみつ。それより、オナニーさせてくれよ」
耳元でささやかれた。
はっと振り向けば、至近距離にヒル魔の顔。その目が武蔵を覗き込んでいる。
「だ……駄目だ」
「へえ? じゃあ、あんたがしてくれんのか?」
「馬鹿いえ! なんで俺が……!」
思わず、つかんでいた手を振り払う。
「どうせ拘束具つけても外しちまうぜ。テメーが俺を押さえてるか? それとも人を呼ぶか? それまでには終わらせられるけどな。スグいけそーだし」
拘束具が駄目なら、人手が必要だ。
武蔵が受話器に手を伸ばすと同時に、派手な喘ぎ声が聞こえた。
「あっ、あっ、イクっ!」
ヒル魔が己のものをしごいている。
武蔵はあわてて子機を放り出し、その腕をつかんだ。
馬鹿みたいだ、と自分でも思う。
何かもっといい手があるはずだが、まるで低能のようにヒル魔に振り回されることしかできない。
ヒル魔はおとなしくしごく手を止めたが、せつなげに眉根を寄せて武蔵を見る。
「なあ……。も、ホントに俺、限界なんだよ。イキてぇ……」
はぁ、はぁ、と薄い唇から浅く吐息が漏れている。
武蔵が視線を落とすと、ヒル魔のそこが大きくびくりと揺れた。
「あ……、イキた……」
びくびくと動いて、先走りをあふれさせている。
それを見ている武蔵も、下半身に熱が集まってきた。
「どこでも……い……から……触って……くれ、よ……」
言われて、ヒル魔の裸体に視線を走らせる。
仰のかせた、細い首筋。色づいた、二つの胸の飾り。やわらかそうな、太ももの内側。
「自分でするなよ」
武蔵は低く呟く。
一体、自分は何を言っているのだろう。
ヒル魔は小さく、何度かかぶりを振る。
武蔵は胸の突起へ手を伸ばす。すっかり立ち上がっていても、そこはつまめるほどには大きくなく、武蔵は指先でこねるように刺激を与えた。
「ん……」
ヒル魔が、鼻へ抜けるような喘ぎ声をあげる。
「あ……焦らすなよ……もっと、下……」
手を、なだらかな腹へ滑らせる。
「も、っと……下……だ」
すう、と指先を滑らせ、中心には触れぬまま、腰から太ももへ手を這わせる。思ったとおりやわらかい太ももの内側を、こねるように愛撫する。
「あ、や……、イキたいって……言ってる、じゃ……」
ヒル魔が武蔵の腕にすがりついてくる。
喘ぎ声なのか、荒い息遣いなのか分からないものが、武蔵の耳をくすぐる。
「イキたいのか」
武蔵もすっかり興奮していた。股間はとうに痛いほど張り詰めている。
ヒル魔は、こくこく、と何度も首を縦にふる。
「イキたい、イカせて……武蔵」
あまりにさりげなく放たれたのでうっかりやりすごすところだったが
「……何?」
コトの重大さに気づいて、武蔵は身を固くする。
身体が離れかけるのをヒル魔が、すばやく腕をからめて止める。
「ちょっと待て。俺は……」
名乗ってない。たしか、一度も名乗ってないはずだ。
ヒル魔はニヤニヤと笑う。
「ビビっちまったか? エリート軍医さんよ」
さっきまでの、息もたえだえのよがり方はなんだったのかと思う口調だ。
「どうして、お前……」
まさか、あれが全部演技だったと言うのか?
そう思うが即座に否定する。
あり得ない。自分の眼はもとより、機械類もすべて欺くことなど、一世紀前ならいざしらず、現代では不可能だ。
混乱する武蔵をヒル魔は面白そうにみやっていたが、
「答えを教えてやるよ。記憶操作は軍の専売特許じゃねぇってこった」
「なに……」
武蔵は思わずヒル魔の小さな頭を両手でつかむ。
「お前、まさか脳をいじったのか?!」
軍でないとすればモグリの機関だろうが、脳に手を加えることと、遺伝子操作は、世界で最も高等な技術を扱う軍隊でさえ、リスクが大きすぎてめったにしない。
だが、ヒル魔は手を振り払う事もせず、ばぁか、と答えた。
「誰がそんな危ないマネするかよ。ただの催眠術だ」
「あ……ああ……」
そうか、その手があったか。だが、だとすれば。
「ヒル魔。お前、いつから記憶が戻ってるんだ?」
「さっき。てめぇの顔見たトキ」
「……。俺の顔が催眠を解くキーになっていたのか? 俺に会えるとは限らないじゃねぇ……」
か、という語尾が、呑み込まれた。
ヒル魔が武蔵に口付けてきたからだ。
ヒル魔の舌が武蔵の唇を這いまわり、口内を刺激する。いやらしくねっとりとしたキス。
濃厚な口付けの後、ヒル魔は小さく笑う。
「でも会えただろ。問題ねえ。……なあ、それより、コレ、よこせよ」
ヒル魔の手が武蔵の股間にのびた。そこは先刻の衝撃にもかかわらず持ち上がったままだ。
ヒル魔は眉根をせつなげに寄せる。
「なかなか……いいもん、持ってんじゃねぇか」
いつの間にか、ヒル魔の指が武蔵のズボンの前を開け、下着の上から、形と大きさを確かめるように蠢いている。
やはりヒル魔は初めてなどではなかったのだろう。記憶を操作されていただけで。だが、もうそんなことはどうでもいい。
武蔵はヒル魔の脇に両手をいれてかかえあげ、ベッドに押し倒した。
武蔵は自らの衣類を手早くはぎとると、改めてヒル魔に覆いかぶさった。
白く、きゃしゃな裸体に、ところかまわず唇を落とす。小さな胸の飾りに、念入りに舌を這わせた。
夢にまで出てきた身体が、目の前で淫らにくねる。
「……あ……早く……はや……くぅ……」
ヒル魔が目元を潤ませて訴える。
ローションを使って焦らされていたのだ。とうに限界を超えているだろう。覚えのある身体なら、なおさら。
ヒル魔の中心、濡れて、震えるそこへ武蔵は唇をつけた。
途端、
「あっ、駄目だ……っ」
ヒル魔が叫ぶと同時に、先端から勢いよく白い液が吹き出した。己の下半身を汚しながら、びくびくと腰を振る。こぼれ出す悦楽の呻き。そしてそれは、かなり長い間続いた。
目の前で絶頂を迎えたヒル魔に、武蔵はただ息をのむ。
しばらく荒い息をついていたヒル魔が、うらめしそうな視線を武蔵へ向けた。
「大丈夫だ。俺はまだだし……」
それに、ヒル魔のそこも、まだ硬度を保っている。
ヒル魔が、んく、と音を立ててつばを呑み込む。
「……後ろに……」
ああ、なるほど。そっちが疼いているのか。
武蔵はヒル魔をうつぶせにし、こぶりだが形の良い双丘を割った。
割れ目の始まるあたりから舌を這わせていくと、ヒル魔が、はっ、と息を吐く。
おそらく使い込んでいるだろうそこは、意外ときれいだった。
中心を舌先でくすぐる。
「あ……あ……」
ヒル魔はシーツに額をおしつけるようにして喘いでいる。腰が力なく上下に揺れた。
ひくつくそこへ、ずるり、と舌を押し込んだ。
「あっ、ああっ」
ヒル魔が背中をしならせて叫ぶ。
中でかき回すように動かすと、声は更に大きくなった。
武蔵が舌を抜いても、そこは開いたまま。前のものの先端から、シーツヘ糸が垂れていた。
「武蔵……もう……っ」
ヒル魔が右手を伸ばして、己の尻の肉をつかんで広げるようにする。
入れて欲しいのだ。
だが、武蔵はちょっと待て、と答えて、代わりに指を差し入れる。
ヒル魔は不満そうに、それでも啼き声をあげる。
武蔵とても焦らしているわけではない。直腸を直接触れるなど数年ぶりのことで、前立腺の位置がどこだったか、実は自信がなかったからだ。
機械を操作してだったらすぐわかるんだが。
だが、ちゃんと知識と一致するあたりに小さなしこりを見つける事ができて、武蔵は安堵する。
ヒル魔が高い声で啼く。それを聞いて、ふといたずら心がわいた。
指先で前立腺を刺激しながら、男の指を二本加えている入り口へ舌を伸ばす。
「あ! 駄目……ぁ、はぁっ、駄目、だ……それ、いい……イ、ク……イっちまう……っ」
武蔵が指をバラバラに動かすと、がくっ、と大きく腰がゆれた。と同時に、きゅう、と締め付けてくる。あまりにきつさに、もう指を動かせない。
指二本だけでこのしめつけなら……。
武蔵は思わず生唾を呑み込んだ。
少しして弛緩したそこから指を引き抜き、再び仰向けにする。
ヒル魔のソコはうなだれかかっているが、後ろで喜びを得る場合、この状態で不自然でないのは武蔵も知っている。
武蔵はヒル魔の中心へ己をあてがうと、ゆっくりと腰を進めた。
「……あ……ああ……っ」
ヒル魔がのけぞる。もともとさんざん焦らされた身体。いったばかりで更に敏感になっている身体。
入れるほうも、さすがにきつい。わずかに痛みを感じる。
だが。
武蔵はすっかり立ち上がっている胸の突起に手を伸ばす。と、内部がさらに絞まった。
その体勢のまましばらく動かずにいると、ヒル魔の内部が変化した。武蔵自身を絞るように蠢いている。その分動く余裕ができたので、武蔵は抜き差しを始める。勿論、最初はゆっくりと。
「あっ! ああ! いいっ、いい……っ! 武蔵!」
ヒル魔の身体の脇へ武蔵がついた腕に指をからめて、ヒル魔がもだえる。
驚いたことに、ヒル魔の入り口がやわらかくなり、ひだのようにムサシ自身にからみついてきた。そして内部はきつく締め付けたり、絞ったりという動きをするのである。
武蔵とてもたまらない。
思わず低いうめき声をもらしながら、必死で腰を使う。気を抜くと一気に絶頂まで持っていかれそうだ。
ヒル魔は乱れに乱れていたが、さすがに2回イカされた後とあって簡単にはイカなかった。
武蔵はヒル魔の両足を、肩へかつぎあげる。
結合が浅くなるが、その分前立腺を強く刺激することができる。
己の限界が近づいていることを悟って、武蔵は律動を速くした。
「あっ! ……やぁ……激し……っ ぅんっ……んんっ!」
ヒル魔が頭を左右に振り、シーツをわしづかんで身悶える。
水音が室内に響く。
武蔵自身の先走りと、おそらくはヒル魔の腸液だ。
本当にこいつの身体は……。
「ぁあ、あっ! あっ! あっ! も……っ、駄目、武蔵……俺、も……イきそ……っ」
「ああ。イケよ。俺もイク」
荒い息の下から、ささやくように応える。
カリが、内部のしこりにひっかかるような気がする。本来、そこまで肥大しないはずだが。
だが、武蔵は意識してそこを攻め立てた。
ヒル魔は更にのけぞり、声を上げる。
「ひっ、あっ、イク……イクっ、イク……っ!」
男にしてはきめの細かい白い太ももが、武蔵の頬におしつけられる。
元々きつかったそこが更に絞まり、さすがに動くこともままならなくなる。
キツすぎて、痛いほどだ。
だが、ヒル魔が激しく腰を突き上げたのと同時に、己も先端から吹き出した。
腰のあたりから、快感が脳へつきあげる。
「ああ……っ、いい……っ! 熱い……っ」
ヒル魔の愉悦の叫びを聞きながら、武蔵もだらしなく声を漏らす。
下半身すべてが熱い。腰が溶けるようだ。
二人はしばらくその体勢で硬直していたが、やがてゆるゆると結合を解いた。
「ん……」
ヒル魔が小さく呻いて、ぴく、ぴくっ、と身体を震わせる。それから身体を弛緩させ、満足げな吐息をついた。
武蔵は放心状態でそれを見ていたが、ゆっくりと腕を伸ばして、ヒル魔の額に濡れてはりついている金の髪をどけてやる。
「……良かったか?」
ヒル魔が聞いてくる。目元に逐情の跡はあるが、浮かんだ光はすでにかなり冷静だ。おそらく、武蔵よりも。
「ああ。……お前は?」
ヒル魔はすぐには応えず、腕を伸ばしてくる。起こせ、ということだろう。武蔵はそれをつかんでひっぱる。
ベッドの上に並んで座る状態になってから、ヒル魔は「ああ、良かったぜ」と応えた。
「俺ら、身体の相性いいよな」
そういいながら、武蔵の唇へ軽く口付ける。
「そうだな」
たしかに、あれだけの快感を覚えたのは、相手が女でも記憶にない。
「んじゃ、決まりだな」
ヒル魔がにやりと微笑う。
「なにが?」
「鈍いヤツだな、てめぇ!」
ヒル魔が怒鳴った。至近距離なのでかなりつらい。
「スカウトだ! テメーをもらいにきたんだ、俺は」
「そ……」
それで、武蔵のことを、顔も名前も知っていたのか。いや、そうではなくて。
「もしかして、それだけのために、ここへ?」
わざわざ記憶を操作して、軍につかまり、拷問まで受けて……。
こいつ、本当に……?
まじまじとヒル魔の顔を見つめる。
ヒル魔はにやりと笑っただけで応えなかったが。
「てめぇが欲しい。武蔵厳」
「……」
「てめぇのことは、何でも知ってる。その才能を軍のためなんかにつかうのはもったいねぇな。俺に寄越せ」
「……」
「代わりに、俺をくれてやる」
「……」
「一緒に、来るだろ?」
武蔵は首を縦に振ることしかできなかった。
了
いやー、終わった。この結末に持っていきたいだけだったので、最後はやけにふつーのHになっちゃいました(汗)。
このお題もな……この話で消化していいものか……。長いし;