『ウは宇宙船のウ』


ヒル魔とムサシをのせた宇宙船デビルバッツ号は、星系図に載っていない未知の惑星に不時着した。
宇宙船にはもちろん彼ら以外のクルーもいるが、不運にも不時着時に負傷したり、コールドスリープから目覚めるのに時間がかかったりで、とりあえず自由に動けるのはこのふたりだけだった。
「大気は問題なさそうだな」
手元の機械で成分をチェックしていたヒル魔は、そう言うと、ヘルメットを脱いだ。ものものしい宇宙服もぬいで、軽素材の黒いつなぎ姿になる。
武器をベルトに収めると、ムサシを振り返った。
そのころにはムサシも同様の黒いつなぎになっていた。
「救助が来るまではここにいなきゃならねぇからな。あとは……生態系しだいだろ」
この星に攻撃をしかけてくるような生物が存在しないとも限らないのだ。
いくら武器があるとはいえ無尽蔵ではないし、宇宙船を飛ばすことはなくても維持するのに燃料が必要だった。
「つっても、見渡す限りジャングルだな」
ぐるりと周囲を見渡して、溜め息混じりにムサシが応える。
不時着時に宇宙船が周囲の木々をなぎ倒し、高温であたりを焼き払ったため、ふたりがいるところから半径200メートルぐらいは焼け野原になっているが、そのむこうは360
度、視界もきかなそうな深い緑であった。
「ま、日没まで探検と行くか」
そうつぶやいて、ヒル魔はニヤリと口角をあげた。
覚悟を決めて踏み出したものの、道らしきものなどはまったくない。生い茂った植物をひたすらなぎ払いながらの前進なので、たいして距離は稼げそうになかった。
「これだけ緑があるんだ、どっかに水があるはずだがな」
手にした棒で目の前に垂れ下がってきた蔓を払いながら、ムサシはつぶやく。
と、前を行くヒル魔が、不意に足をとめた。
「どうした?」
「……なんか、匂わねぇ?」
いわれて、ムサシも鼻をひくつかせるが、緑の青臭い匂いばかりだ。
「いや、ダメだな。わからん。どんな匂いだ?」
「ん〜、どっかで嗅いだような……とにかく、植物系の匂いじゃねぇよ。もっとキツい」「ふぅん? 動物がいるってことか?」
ヒル魔は小首を傾げるが、そのまま前進を再開した。ムサシも後についていく。すると、やがてムサシの鼻にもその匂いがわかるようになってきた。
「なんだ、これ……いやなにおいってワケじゃねぇが……」
「こっちのほうからだ」
ヒル魔が早い足取りで2,3歩進みかけたとき、ふいにその姿が消えた。
「うわっ」という叫び。
「ヒル魔!」
あわててムサシも駆け出そうとすると、「足元気をつけろ!」と声が飛んできた。
ばさばさと葉を掻き分けて目にした光景に、不覚にもムサシは呆然とした。
「な……うつぼかずら……?」
目の前、すぐ足元で口をあけていたのは、巨大なうつぼかずら。地球なら食虫植物だが、この大きさは……。
そこまで考えて、ハタ、と我に返った。
「ヒル魔!」
目の前に金髪が見える。ヒル魔はうつぼかずらの壺状の穴の中に、腰までつかっていた。
ちょうど縁のところを掴んで落下を防いでいる。間一髪だ。
「大丈夫か?!」
「……ああ。なんとか」
苦い顔でつぶやいたヒル魔だったが、なにかに驚いたようにビクリと大きく身体を震わせた。次の瞬間、かっ、と頬を赤らめ、唇をかむ。
「どう……」
どうしたのか、と続ける前に、ヒル魔の悲鳴のような声に遮られた。
「ムサシ! 早く引き上げてくれ! 早く! くそ……こいつ」
ムサシはあわててつかまれそうな木を探して左右を見回す。
「く……う」
びくっ、びくっ、とヒル魔の身体が痙攣していた。
「おい! ヒル魔、大丈夫なのか?」
「あ……うっ、はや……く……!」
ムサシを仰ぎ見た表情に、見覚えがあった。それは、ヒル魔がベッドのなかでひどく乱れたときにしかみせない愉悦の表情だった。
上気した頬。恍惚とうるんだ瞳。嬌声をこらえかねて半ば開いた唇。わきあがる快感にひそめられた眉。
ヒル魔は息をあらげ、助けを求めてムサシを見ている。壺のふちをわしづかんだ手がぶるぶると震えていた。
「早く……ムサシ。早く……! も、だめ……っ」
ヒル魔が大きくのけぞった。一体壺の中でなにが起きているのかはしらないが、ムサシは瞬時に逆上する。
くそっ、植物なんかにヒル魔をイカさせてたまるか!
左手で手近な木の枝をつかみ、右手でヒル魔の襟首をつかんで力任せにひっぱりあげた。
地面に転がったまま、ヒル魔は悶える。服をぬごうとするが、手が震えてうまく脱げない。
ムサシが手を貸してつなぎをはぎとる。その瞬間、限界をむかえたヒル魔の屹立からビュビュッ、と白い液が吹き出した。
「あっ、あっ、やぁ……!」
仰向けに横たわったまま、ヒル魔は何度も腰を突き上げる。そのたび、勢いよく先端から飛沫が散った。
「あっ……は、あ……っ、ん、ぅん……っ」
ムサシはヒル魔のつなぎを手にしたまま、よがり声を上げながら腰を上下に動かす彼を、ただ呆然と見ていた。
いやいやをするようにヒル魔は頭を振って身悶えていたが、射精はなかなかおさまらなかった。
しばらくして、ようやっと余韻に震えながら、ヒル魔は弛緩した。地面に、夢中でかきむしった跡がついていた。
「……思い……出した」
かすれた声でヒル魔がつぶやく。
「なに?」
「この匂い……。麝香だ」
言われてみれば、なるほどである。
さすがに2人には効かないが、動物ならば引き寄せられてくるだろう。
「……ヒル魔。おまえ一体ナニされたんだ?」
やっとショックから立ち直ったムサシが問えば、ヒル魔は顔をしかめて、ふい、とそっぽを向いた。
「……『アレ』のなか、見てみろ」
「?」
見りゃわかる、とヒル魔が言うので、ムサシは慎重にうつぼかずらもどきに近寄り、壺の中を覗き込んだ。が、暗くてよく見えない。
腰にさげたライトをとりだして照らしてみた瞬間、ムサシは低く唸った。
液体のなかに、ぬめぬめとした半透明のもの。まちがいなく長モノ系だ。
「ありゃ……なにかの生き物か? それともこの植物の一部か?」
そうつぶやくが、当然のように答えはない。
だが、ヒル魔の状況は判断がついた。あの無数のうごめく触手が、ヒル魔の下半身を一斉に愛撫したのだ。つなぎのなかに入り込み、秘所、急所にいたるまでくまなく。
敏感な器官にからみつき、ぬめりながらしめつけ、根元から先端、くびれも隅から隅までまですきまなくこすりあげ、たちまちにして追い上げた。
ミミズ千匹とかいう名器があるが、たしかにこれはひとたまりもない。
それでもヒル魔は最後までイクのをこらえた。ひとつには、射精したことで次になにが起こるかわからないからだ。もうひとつは、単に……嫌だったのだろう。いくらこの世のものとは思えないほど気持ちよくても。そう思いたい。
ムサシがヒル魔のところへ戻ると、ヒル魔は後始末に使ったタオルを手に、めずらしく困った顔で自分のつなぎを見ていた。得体のしれない液体につかったそれを、ふたたび着る気になれないのだろう。
「水、探そう。それで、身体洗おう」
ムサシは自分の乾いたタオルを差し出しながらそう言う。
ヒル魔はそれを受け取ると、腰にまいた。そして、照れ隠しなのか、怒ったような、それでいてどこか恥ずかしそうな表情で、おう、と応えた。

「……って、夢を夕べ見たんだけどよ」
「夢オチかよ」



し……触手? か? エロが少ないのでもう一本この設定で書こうかと。

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