『日常的背徳』


毎日着ていればくたびれていて当然。ましてや年齢的に人生で一番元気いっぱいの時期の男子なのだから。けれど、ヒル魔の学ランはどういうわけか、いつまでも妙にきれいで、ほこりっぽい、という形容を免れない自分のものとは違っていた。
もちろんムサシの学ランとて、休みのたびにクリーニングに出しているし、母親がアイロンがけしてくれることもしばしばだ。それでも、ひじの辺りが光っていたり、ひざのあたりが飛び出ていたりは、もう仕方がない。
ヒル魔の学ランをしげしげと眺めていると、例によって不機嫌な声に妨げられた。
「おい、さっきから何見て考え込んでやがんだ、この糞ジジイ」
「いや……お前の学ランてきれいだよな。袖口がほつれたりとかしてないし、型崩れもしてないし」
「……そうか? 普通だろ」
ムサシはヒル魔の腕を捕らえると、自分の腕と重ねて見せた。
「ほら、俺のは布が薄くなって糸が見えるぐらいになってるだろ」
言われて、ヒル魔もふうん、という表情を見せる。が。
「で?」と問う。
「あ?」
「だから?」
「お前って、生活感ねぇな、って話」
に、と笑って見せれば、ヒル魔はかすかにため息をついた。
「俺にどうしろってんだよ」
「別に。こうして触れることもできるし」
そういいながらムサシはヒル魔の頬に掌をあてる。
わずかにあおのいたヒル魔を認めて、ムサシはその薄い唇をついばんだ。
唇を触れ合わせるだけのキスが徐々に深くなる。互いの舌先をこすり合わせ、からめあう。
言葉はなく、荒い息遣いと口内でたてる湿った音だけが響いた。
ムサシは手をヒル魔の下肢へ伸ばす。その中心のふくらみをとらえると、ヒル魔の身体がぴくりと震えた。
ジッパーに手をかけ、引き下ろす。中から、たちあがりつつあるものをつかみ出した。
ヒル魔がそれに応じてムサシのものに手を伸ばそうとするのを制する。
ヒル魔自身をすばやく2、3度こすり上げてから、ムサシは一歩、後ろへ退いた。
「……ムサシ?」
不審気なヒル魔の声。
だが、ムサシは目の前の光景に生唾を飲んだ。
意図してやったとはいえ、想像をはるかに超えてエロかったのだ。
意外にきちんと身につけた制服の上下の中心で、上着のすそから欲望のままに飛び出しているやわらかそうな白い器官。黒い鋭角なラインの中でそこだけがやけに生々しく、そしてひときわ淫靡だった。
きちんと第一上まで留めた上着。縦一直線に並ぶ金ボタン。履きつぶしたりしてはいない上履き。詰襟からのぞく固そうなカラー。なのに……その中心に、先端をわずかに濡らしてそそり立つもの。
変態くさいな。
われながらそう思うが、着衣を乱すことなく屹立した自身をさらけだしているヒル魔の姿は恐ろしく背徳的で、魅力的だった。
「ヒル魔、お前すげーぞ」
かすれた声で言えば、何が、と返される。
ムサシはそれには応えず、ヒル魔自身にそろそろと手を伸ばした。わざとゆっくりと、じらすように。
あともう少し……。
ほんとうにギリギリのところでピタリと動作をとめると、期待のためか、立ち上がったものがピクリと動いた。
ヒル魔もそれを見たのだろう、すう、と頬に赤みが差した。
「触ってほしいか、ヒル魔?」
「……」
こんな状態で強情を張っても仕方がないと思うのだが、ヒル魔は視線を落としたまま黙っている。ムサシも答えを期待してはいなかったので、そのまま指を先端に触れさせた。
「……っ」
小さく、吐息が漏れる。唇が乾くのだろう、舌がのぞいて薄い唇を舐めた。
ムサシはそのヒル魔の表情を楽しみながら、指を動かす。先端に浮かんだ水滴を亀頭全体に円を描くように塗りつける。
ヒル魔が気持ちよさそうに目を細めた。
裏筋をなで上げる。何度も。
「はあ……は……」
きれいな眉がひそめられる。
くびれたあたりをこすると、ヒル魔の身体が震えた。
「気持ちいいか? ヒル魔」
「ん……イイ……けど、もっと強く……」
リクエストに応えて、ヒル魔自身を握りこむと、上下にしごき始めた。
「あ……、あ……っ」
ヒル魔は、ぐ、とあごをのけぞらせて小さく嬌声を放つ。
だがムサシはふたたび手を離すと、机をふたつくっつけた。
「なに……?」
「ヒル魔、前向けよ。ちゃんと机の前に座る格好で」
手淫を中断されてヒル魔は険しく眉根を寄せたが、しぶしぶムサシの言うとおりにする。ムサシはそのヒル魔の隣の席に腰掛けた。
そして、机の下で震えているヒル魔のものに再度指を絡める。
「糞エロジジイ。一体テメー、何がしてぇんだ」
「……こうして黒板のほう向いて座ってると、授業中みてーだろ?」
「どこが」
しらけた言葉が返ってくるが、息が荒いので威力はない。
「もしかして、授業中こうやっててもバレないんじゃねぇか」
ムサシがそういえば、ヒル魔はあきらかにぎょっとした表情を浮かべた。
「冗談じゃねーぞ」
「……教室じゃなくても、図書館とか。だって出てるのココだけだしよ」
いいながら、先走りでぬるぬるとし始めた器官を指先でこする。
「こ……こんな密着して、しかもお前の手が動いてたら、ナニしてるかバレバレに決まってんだろ!」
「いや、なんとかなるだろ。ほら、俺が教科書忘れたことにして二人で教科書見てるフリすれば密着しててもおかしくねーし。手だって……」
手首を返すように、動かす。
「あんまり激しく動かさなきゃよ」
「ムリだ……って」
あがる息をこらえながら、ヒル魔がにらんでくる。
ムサシはかすかに唇を吊り上げて、そうだな、と応える。
「授業中じゃ、キスしたくなってもできねぇもんな」
そしてヒル魔の言葉を待たずに、口付けた。
薄い唇をむさぼりながら、ムサシはヒル魔の腰へ手を回して力を入れる。
「?!」
ヒル魔が驚いた顔をしているスキに抱え上げ、ふたつくっつけた机の上に横たえた。
「ちょっと狭いんじゃねぇ? 床の上のがいいだろ」とヒル魔。
たしかにこの机では両手をつくほどの幅もない。
「床の上だと膝がいてーんだよ。それともお前、上に乗ってくれるか?」
「……落ちつかねーなあ」
という返答からすると、騎乗位は却下のようだ。
ムサシとしても騎乗位をしたかったワケではないので、固執せず行為を再開する。
ヒル魔のベルトに手をかけ、下着ごと脚から抜き取った。
上着は脱がせなかったが、さすがに息苦しいのだろう、ヒル魔は自分で襟の辺りをくつろげた。
ムサシは自分の指を口に含んで湿らすと、ヒル魔の後ろにあてがった。そこは、前からあふれた液体で濡れている。
ゆるゆると周囲をさすってやると、ヒル魔の上体がゆっくりとのけぞった。手は、机のふちをつかんでいる。
スペースが狭いせいで、したくてしているのではないだろうが、ヒル魔はM字開脚の格好だ。
ムサシは指を狭隘なところへ差し入れた。少しずつ、奥へと進める。ヒル魔は眼を閉じて何かをこらえるような表情を浮かべている。
やがて、内部にある敏感な隆起に触れる。
「あ……っ」
ヒル魔がこらえきれず、声をあげた。
指の腹で、のの字を書くようにムサシが刺激すると、ヒル魔の前もピクピクと動く。
腰がひとりでにうねり始める。
「ああ……、ん……」
上を脱いでいないだけに、その動きはさして大きくないにも関わらずひときわイヤらしかった。
ふと興がのったムサシは、ヒル魔の前で震えているものに舌を伸ばした。
先端を舐めあげると、ヒル魔が嬌声をあげる。
「あっ?! あ……っ!」
このまま最後まで追い上げてやることにする。
本格的に舌を絡め、中の指を動かすと、ヒル魔の声はさらに高くなる。
校内である。生徒はおそらく皆帰ったろうが、教師の見回りはわからない。
口をふさいだほうがいいか?
そんな考えがチラと頭をよぎったが、ヒル魔の甘い叫びに、ムサシも十分興奮していた。
唇でくびれのあたりをきつく銜え、頭を前後にゆする。
差し入れた指は、2本になっていた。
内部で指をバラバラに動かすと、きゃしゃな腰が跳ね上がる。
「あ、あぁ……っ、ムサシ、……も、駄目、駄……ああ……っ」
ガクガクと身体を揺らしながら、ヒル魔が必死で訴えている。
両方をこうして攻められると、ヒル魔はとても弱い。
気にするな、という意味をこめて、ムサシは銜えたまま頷く。
だが、気づかないのか、ヒル魔はムサシの頭に掌を当てて離そうとする。
ムサシは思い切り舌先を先端にこすりつけた。
びくっ、と腰が揺れる。
「ん、あっ、ムサシ! 本当に……イキそ……っ、ああぁ、駄目だ、もうっ」
イクっ、と叫び、ヒル魔は身体をがくがくと痙攣させた。
と同時に、のどの奥へ液体が叩きつけられる。
それを飲み下しながらビクビクと暴れるそれを唇できつくしごきあげ、先端に口づけするよう吸い付くと、吹き出してくるものよりも強く、思い切り吸い上げた。
「あっ?! そんな、やっ……! あ、ああ、あああ……っ」
普段なら止める快感の頂点のタイミングでことさら刺激を与えられているのだ。
無理矢理長引かされた絶頂に、ヒル魔は絞るように声を上げ、更にガクガクと腰全体を大きく上下にゆすった。
ずる、とヒル魔の脚が机から滑り落ち、両脇へだらりと下がる。ムサシが唇と手を離すと、余韻のためか、ビクッと震えた。
月明かりが照らす教室で、上半身には学生服、下半身には何も身につけず、無防備に白い裸体をさらし、荒く息をつきながら力なく横たわるヒル魔。
とびきり淫靡なショーをひとり目にすることができたムサシは、目を細めて満足の笑みを浮かべた。

だが、ひと心地ついたヒル魔に、その後たっぷりと時間をかけて仕返しされたことは、言うまでもない。


学ランネタ。途中の授業中云々のくだりはなくてもいいかな、と思いましたが、まあストーリーなんかあってないようなものなので、そのまんまです。
上半身だけ着衣って、エ……エロいと思うんですけど、どうスかね?(ハァハァ…)
ところで靴下はどうなってるんだ、とかツッコミはしないでくださいね。

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