『プレゼントはわたし』


ムサシがポケットから取り出したものを見て、ヒル魔は眉根を寄せた。
ピンクローターがふたつ。
「……。また、お前は……」
もう言葉にならない。こいつがこんなにも道具好きとは思わなかった。
と、思っていたら更にもうひとつ出てきた。
「どこにそんなに使う気なんだよ」
ヒル魔のつっこみが弱弱しいのは理由がある。
今日はムサシの誕生日。
先日ついうっかり「誕生日プレゼントはなんでもいいぞ」と言ってしまったのが運のつきだった。
たまたま試合のビデオを見ている最中で半分上の空だったというのもあり、ムサシのことだから無理難題をふっかけてくることはないだろうという読みもあった。
「一晩つきあえ」
ここまでは予想の範疇。だが。
「なにを要求されても拒まないこと」
という条件には「ああ?! ざけたこと抜かしてんじゃねえ」とキレてしまった。
だからといってムサシが一度出した条件を引っ込めることもなかったので、結局キレ損だったのだが。
まあ、放置プレイとか痴漢プレイとかじゃなくって良かったか……。
これからナニをさせられるにせよ、このホテルの一室から出ることはあるまい。
……たぶんな。
「で、なにをすればいいんだ?」
ベッドに腰掛け、半ば開き直ってそうたずねる。
ムサシはローターをシーツの上に転がしながら、ん、ああ……と生返事をする。
「とりあえずシャワー浴びてこいよ」
一向にその気配のないムサシにヒル魔はため息をつき、
「長い夜になりそうだな」
と嫌味にもならないような嫌味をつぶやいた。

室内に低いモーター音が響いている。
ムサシが取り出した道具は更に増えて、手錠と目隠しが加わっていた。
ベッドの上に座った状態で後ろ手に手錠をかけられ、目隠しをされたヒル魔。
呼吸はすでに乱れ、白い膚は紅潮している。せわしなく上下する胸の下、そそり立つものがあった。
立てたひざの間からのぞくソレ。
屹立した前のものの先端近くには、ふたつのローターがぴったりと密着した状態で結わえ付けられている。そして、狭い後庭にもひとつ。
振動のレベルは一番弱いまま。だが、ちょうど雁首に当たるようになっているそれは、十分すぎる快感をヒル魔に与えていた。
「……あ……はぁ」
小さな機械による淡々とした変化のない刺激を、長い間ヒル魔は耐えていた。どうかすると自ら腰が動きそうになるのをやっとの思いでこらえている。
「いい加減にしろよ。この糞ジジイ」「てめぇ一体何が面白いんだよ」
なんどもそう罵声をあげたが、ムサシはこたえた風はなく。
「お前の色っぽい姿が見たいんだよ」「もうちょっと我慢しろ」
のらりくらりと応えるだけだ。
ヒル魔は作戦を変えることにした。
「……ムサシ。口でしてやるよ。てめぇだって見てるだけじゃ、つらいだろ?」
見せ付けるように尖らせた舌を突き出す。
「ありがたいが……」
そう応えるムサシの声も上ずっている。
「俺は見てるだけじゃないからな」
その言葉の意味を理解するのに少しかかる。
次の瞬間、ヒル魔は勢いよく顔をあげた。もっとも目隠しで何も見えはしないが。
「っ! てめえ! ひとりでしごいてんのか?!」
「ああ」
さらり、と返ってきた答えに奥歯を噛み締める。
ク……ソ……!
なにか言ってやろうとヒル魔が口を開くのと同時に、いきそうだ、という声が聞こえた。
「ああ……イイ……もう、イク……」
吐息交じりの低いあえぎ声。
ヒル魔に聞かせるためにわざと言っていると分かっている。だのに、つられて息が上がる。
これでヒル魔が普通の状態ならどうということもないのだが、視界を閉ざされたことによって、触覚も聴覚も鋭敏になっている。
切羽詰った息遣いが大きくなる……と、すぐそばで
「出すぞ」
短く告げられた。
「う……っ」
低い唸りとともにヒル魔の腹に濡れた感触が広がる。
こいつ……ホントにいきやがった……。
むっと濃厚な匂いが鼻をつく。
腹にかかった液体が滑り落ち、ヒル魔の茂みを濡らす。その感触までもが刺激となり、思わずヒル魔は小さく身体を震わす。
ムサシは息を整えるように荒く呼吸を繰り返していた。
ふう、と満足げな吐息。
「お前もイキたいか? ヒル魔」
答えなどわかりきっているだろうに、わざわざそう尋ねてくる。その意図はあまりに明白で、ヒル魔はさらに奥歯を噛んだ。
「そろそろ我慢できないんじゃないか?」
かすかに笑いを含んだ声。
こうしてこのまま黙っているのも、ムサシの思惑どおりだと分かってはいるが、下半身から絶え間なく伝わってくる快感に理性を奪われないようにするのが精一杯だ。
「ヒル魔」
耳元で低くささやかれた。
いつの間にかムサシは背後にまわっている。
耳朶に湿った感触。舌でもてあそばれて、さらに、甘噛みされる。
「あ……っ」
ぞくぞく、と背筋が震えた。
「ヒル魔……」
チュ、と音をたてて背中を吸われる。ザラリとしたひげの感触が背中を這い回る。
「あ……あ」
もどかしさにヒル魔は身悶えた。
ローターの振動は単調だが、確実にヒル魔の弱点を攻めて、萎えるのを許さない。そそり立ったその先端から、粘り気を帯びた液体がいくつも筋を引いて流れ落ちていくのが自分でもわかる。
ふいに背中のぬくもりが遠のいた。
「……すげぇ垂れてるぞ」
今度は前のほうから、声。
「シーツもだいぶ濡れてるし。ヒル魔、お前」
かすかな低い笑い声。
「ぴくぴくさせてんなよ」
瞬間、顔に血が上った。とりつくろう間さえない。
「しっ……してねえ!」
上ずり気味の怒鳴り声には、低い含み笑いしか返ってこない。
「く……」
自然、身体が震えるのは屈辱のせいか、それとも……。
振動が、たまらない。水位を上げるように快感を募らせ、ヒル魔から冷静な思考を奪う。
「しごいてやろうか? ヒル魔」
「……」
「ほら……こんなにあふれさせてるんじゃ、もう限界だろ?」
「……」
「それとも口でしてやろうか? ……エラはもう塞がってるから、裏筋がいいか。それとも先っぽがいいか。尿道なんかどうだ」
そういうムサシの声が、段々下のほうにさがってくる。
ムサシが部位の名を口にするたび、あの太い指が、分厚い舌がソコを愛撫したら、と思い浮かんでしまう。
期待などするまいと思うのに、ヒル魔の息はますます荒くなる。
「……ああ、また溢れてきた。すごいな」
ぽん、と太ももに手が乗せられた。それだけでヒル魔はびくりと大きく身体を震わせる。
「ガチガチだな。反り返って、下腹にくっつきそうだ」
ふたつの果実をやわやわと揉まれる。かすかな痛みが、さらに快感を増幅させる。
口を半開きにし、漏れてしまいそうになる喘ぎをこらえた。
「……ムサ……シ……」
そうしながら、名を呼ぶ。
「ん?」
「目隠し……外せ、よ」
「……」
「見たい……俺も……」
うわごとのようにつぶやくと、スプリングのきしむ音がして、視界が開けた。
目に飛び込んできたのは、立ち上がりきり、濡れそぼっている己自身。
先端の両脇、雁首あたりをローターで挟まれ、きつめに糸でしめつけられている。そしてムサシの言葉どおり、びくびくと痙攣している。
「う……っ」
目の当たりにして興奮したせいか、ひときわ大きくそれが跳ねた。
大量の液体が先端からシーツに散らばる。
「あ! や……っ、はぁっ、はぁっ、は……」
突発的にイッてしまいそうになるのをあやうくとどめる。
がっくりと頭をのけぞらせ、きつく目をつぶり、唇を噛む。
「ん……く……」
ぎゅっ、と拳を握り、ぶるぶると全身を震わせながら、なんとか射精感をやりすごした。
「ヒル魔」
呼びかけにそろそろと目を開けると、ムサシがローターのリモコンに手をかけているところだった。
ヒル魔はムサシの指先から視線をはずせなくなる。
「強くしてやろうか。まずは……左」
く、と目盛りが押し上げられる。
「あ! ああ!」
大きくなったモーターのうなりと同時に、ヒル魔は叫んだ。どさり、とベッドに身体を投げ出す。後ろ手に手錠をかけられているので横向きに倒れる。自分のふとももに自らの屹立があたって、ヒル魔は甘い悲鳴をあげた。
もうこれ以上声を出さずにはいられない。
「次に……右。それから、後ろも」
ムサシがリモコンを調節する度、ヒル魔はのたうった。マットレスの上でのけぞり、シーツを掴み、足の指先まで反り返らせる。
「! ひ……ああっ、ああっ! ムサシ……っ」
それでも、決定打にならない。あとちょっと。もう少しなのに。手が邪魔で仰向けに横たわることができない。仰向けにはなれるが、シーツに爪先立ちで腰を高く上げた状態。頭よりも高い位置で震えている、自分自身。
後ろにおさまったローターの振動は背筋を這い上がり、直接脳へ響くかのようだ。
ガクガクと痙攣しながらもだえる。先端からひっきりなしに白いものを吐き出している。
「あ……ムサシっ、ムサシぃ……っ」
いかせて欲しくて、ひたすらに名を呼ぶ。
イキたい……イキたい……イキたい……!
「もうちょっと我慢できねぇか?」
「でき……な、い……っ、もぅ……っ」
声を絞りながら、ヒル魔は大きくかぶりを振る。
ムサシは満足げに微笑うと、貪欲に尚も快感を求めて震えているヒル魔のそこへ、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
我慢しきれず、腰が上下に揺れる。
「おい、ヒル魔……そんなにビクつかせてたんじゃ、触れるもんも触れねぇぞ」
「……っ、そっ、んなもん。掴んでしごきゃ、い……だろ、が!」
余裕ぶった声に、ヒル魔は息も絶え絶えに怒鳴り返した。
「そうかそうか」
笑いを含んだ声がしたと思ったら、強く握りこまれた。
2、3度すばやく上下にこすられる。速いストローク。あっという間に追い上げられる。
「ああ、イイ……イ、イっ、イクっ」
快感が背筋を猛スピードでかけ上がっていく。
「あぁ、出るっ」
さらに尿道を指先でほじるようにこすられ、ヒル魔は絶頂に達した。
無意識に激しく何度も腰を突き上げる。のけぞった顎や首のあたりに飛沫を感じた。
まぶたの裏に光点が踊っている。すう、と一瞬気が遠くなる。白濁したものを吹き上げるたび、満足げなうめき声が己の唇から漏れているのには気づかなかった。
急激に高まった快感とひきかえに押し寄せてくる甘美な倦怠感。それに心地よく身をゆだねるヒル魔の耳に、「夜は長いぞ」と低いささやきが聞こえた。


これは……拘束プレイも目隠しプレイも入ってますが、一応言葉責めのつもりで書いてます。あんまり責めきれてないですがね。てゆか、言葉責めなら絶対ヒル魔さんのほうが得意でしょうからねぇ。
しかしナンですな。本当にただ、キャラクターが性的に陵辱されているダケになってきましたね。うぅ〜ん。もっとヒル魔さんを褒め称えたい! ヒル魔視点にするとそれが不満。

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