ヒル魔の目の前に枕が差し出される。
四つんばいの格好が大変そうだと思ったのか、あるいは、もっと腰をあげろという意味なのか。
拒む理由もないので、ヒル魔は黙って枕を抱きかかえ、顎を埋めた。自然、腰の位置が高くなるが、もう今さら羞恥の感覚は無い。
TVでは、次のドラマが始まっていた。女優の顔が違う。男優も違う。けれど、していることは同じ。
耳からは男女の喘ぎ声、目の前にはからみあう全裸体。そして後ろからは現実に秘所をもてあそばれている。
これで興奮するな、というほうが無理だ。
ムサシの指は飽きもせずにヒル魔の身体を這いまわっていたが、やがてそれとは違う感触がヒル魔を襲った。
後ろを掘り起こすようにうごめいている、湿っていて生暖かく、弾力のある「ソレ」がなんなのか。理解した瞬間、ヒル魔は身体を起こして叫んだ。
「よせ、馬鹿っ!」
「なんでだ? おまえ、フェラ平気じゃねーか」
心底不思議そうなムサシの声。
「テメー……ケツの穴に突っ込んだ舌でキスしたりするつもりじゃねーだろうな?」
「……」
黙ったところを見ると、そのつもりだったのだろう。
「……大丈夫だ。さっき綿棒つっこんでるし」
「イヤだっ」
「唾液には殺菌作用が……」
「うるせーよ!」
「あとでアルコール消毒してやるから」
アルコールって……とヒル魔が言い返す前に、強く腰を引き上げられる。バランスを崩してベッドに肘をつくと同時に、再び後ろにぬるりとした感触が走った。
「うぅ……っ」
ローションの助けも大分あるのだろうが、なにやら軟体動物を思わせる動きに、ヒル魔は鳥肌をたてる。
気持ちいいような、悪いような。しかし、やめてほしいかほしくないかと問われれば、やめてほしくないというのが実は正直なところだった。
執拗に攻められているうち、ヒル魔は己のそこが、口を開けるように弛緩するのを感じる。
すると、ずる、と舌先が入り込んできた。
「!」
高い声をあげそうになり、すんでのところでかみ殺す。
いったいあのごつい男がどんな顔で舌を使っているのか、などと思う余裕もない。
出たり入ったりを繰り返す舌先に、すべての意識をもっていかれる。
ああ……そんな風に動かすなっ。
言ってやりたいが、口を開けば喘いでしまいそうで。
ヒル魔はきつくシーツをつかみ、額を枕におしつけた。
しばらくムサシは舌を遊ばせていたが、やっと抜き取る。と、次の瞬間、つぷり、と太い指が入ってきた。
「っ、……あ……っ」
覚えず声がもれる。
「痛いか? ヒル魔」
心配そうな声。
ヒル魔は枕に顔を埋めたまま、激しくかぶりをふった。
実際、痛くはない。が、未知の感覚に身体が震える。
「力は抜いてくれ。でないと、痛いそうだから」
痛くないっつってんだろ。
そう思いつつも、言われたとおり、身体から力を抜く。
ムサシは一旦指をぬき、ローションをのせては、また差し込んで、を繰り返している。内側まで十分湿らせようという配慮だろう。
ようやくヒル魔がそれに慣れてきた頃、ムサシはさらに指を奥へと進めてきた。
少しずつ、慎重に。なにかを探るように、ゆっくりと。
「! あ……っ」
驚いたような声をあげたヒル魔に、「ここか」と低いつぶやき。
内で、指が、形状を確かめるように動いている。
「あっ、あっ……」
なぜか、ヤバい、ヤバいと思いながら、声をあげつづける。
ムサシの指は乱暴ではなかった。ゆっくり、やさしく内部を往復したり、円を描くようにしたりしている。
だが、当のヒル魔は襲ってくる感覚に翻弄されていた。固く拳をにぎり、身もだえしそうな衝動をこらえる。
な……んだよ、コレ……っ!
内心で思わず毒づく。射精とはまったく違う。だが、まぎれもない、それよりもずっと強い、快感。
と、つとムサシが前に手をまわし、先端をかるくつまんだ。ほんの、それだけの動作に、ヒル魔は大きく喘ぐ。
「ああ……! あ……、もう、ダメ……だ、ムサシっ」
あっという間に追い上げられ、射精感をこらえきれない。
「ああ。いけよ」
そうささやかれ、ヒル魔は奔流のように突き上げる初めての快感に身を任せた。
気が遠くなりそうだ……。
半分閉じた瞳に、ムサシが缶ビールを手にバスルームへ向かうのが見えた。
え〜。実際のところ、ヒル魔さんぐらいすんなり行く人は少ないかと思われ……。個人差もあるでしょう。痛いだけ、という人もいるでしょうし、気持ちはいいけどイクところまでは……という人もいるでしょうし。まあ、せっかくなのでイッてもらいましたけどね。性懲りなく続きます。